コラボレーション

ドリフターズ読本

1時間目 概論
50.5%・・・・これが何だかわかりますか??
ドリフターズの打ち立てた最高視聴率です。たしかに、ビデオや衛星放送などによる多チャンネル化などにより、今の視聴率と比較するのは「野暮」だともいえるでしょう。
しかし、「8時だよ、全員集合!」は16年間に渡り、延べ800回を超える放送を行ってきたのは紛れもない事実です。

皆さんは「ジャンケン」をするときの掛け声は何ですか??
「最初はグー!じゃんけんぽん!」
一度は使ったことあるのではないでしょうか??これも「ドリフ」発信なのです。

ドリフが芸人さんに与えた影響について考える前に、僕たち自身が「ドリフ」の影響を多く受けているのです。
ドリフは「お笑い」を「文化」に誰よりも溶け込ませているのかもしれません。

では、なぜそんなことが出来たのでしょうか??
ここにドリフターズのメンバーの代表的なギャグなどを並べてみますと
「おい~っす!!」(いかりや長介)
「ちょっとだけよ」(加藤茶)
「からすなぜなくの?」
「ひげダンス」
「早口言葉」
「東村山音頭」・・・・etc
共通することは、「音」と「体の動き」があって、その上で子供でも簡単に真似が出来る。というところにあります。

このことはシンプルに考えて彼らが「バンド」派生だったということが理由に挙げられるのではないでしょうか?

こうした、「音」+「動き」で考えますと
ダチョウクラブなどはこの流れの延長線上にあるのかもしれません。また、最近ではTIMにも言えるでしょう。
しかし、ダチョウクラブ・TIMともどちらかというと短いフレーズが多いですから、より「ギャグ」的要素が多いといえますが
実際の「ドリフ」には長い「歌もの」があるわけで
この影響を・・・と考えますと
「慎吾ママ」「テツ&トモ」のほうがこれに関しては影響を受けているといえるでしょう。。

ちょっと、書いただけでこれくらい出てきます。。ふぅ。。先が長いです・・
明日も引き続きドリフの影響について書きますね
2時間目 全員集合
この番組、S44年に放送を開始しています。
僕が生まれたのがS51年ですから、16年の歴史の中で丁度半分くらいの時期に僕は生まれているんですね。
加えて言うならば、僕の記憶にあるのは本当に最後の1・2年という事になるのでしょうか。で、当然のように、全ての番組をもう一度見直すのは不可能に近く本当は僕がドリフについて書くのはおこがましいことの局地なんですが・・・

今日はドリフターズの表現方法などの方向性からアプローチしてみたいと思います。
昨日も少し書いたのですが、元々ドリフはミュージシャンなわけで、しかもメンバーが5人と大所帯ですから、「漫才」というのは無いんです。
【8時だよ全員集合!】においても最初の30分はたっぷりと「コント」に使われています。(よく考えると、30分のコントって凄い贅沢だよな・・・)
僕らの世代にとっては志村さん・加藤さんの人気が凄かったわけですから、どうしても【人物設定】などは「デフォルメ的」だったように思うのですが、仲本さん・高木さん・いかりやさんの人物の作りこみの仕方は「模写的」ともいえるのではないでしょうか。。
そういった意味で、「東京風・関西風」の色分けがしにくい反面、全国的な人気が生まれたともいえますし、後のコントにおけるキャラ作りに「関西風」が入り込める土台を作ったとも考えられます。
また、ドリフというと、お笑いが好きな人の中には「モンティーパイソン」を引き合いに出して説明をする人がいるかもしれませんが、「モンティー」の方が遥かに「毒」の入った「笑い」であり、単純に子供が楽しむとは違う「笑い」だといえます。また、映像の作り方も「モンティー」の方が凝っていて、これは現在の「ミュージックビデオ」とかの方に影響を与えているかもしれませんね。
こうやって書いていると、ドリフターズの笑いチープなものかと言いますと全然違います。狭い舞台を最大限に利用する「セット」作りは今のお笑いよりも凝っていたとさえ言えます。
(このスタジオセットのつくりの凄さはいまだと「大江戸でござる」に一番影響を残しているのかな・・・)

最も、モンティーとドリフ両方に共通項が無いわけでは無いのです。一つ目には「カラダの使い方」二つ目には「テーマが何であればかばかしい」所などは共通しているといえます。
代表的な彼らの笑いの構造についてのお話です。
で、僕が思うにはここが「ドリフ」の「ドリフ」たる面白さかなと思うんですよね。
また、ドリフというと、笑い声を後から足して「ここが笑うところですよ」ということもやっていますね。最近だとこの方法は露骨だとして、番組制作の方の笑い声が入っていますよね(exトンネルズの皆様のおかげでした。)
また、爆発シーンの後はこれでもかってほどすすけた顔とぼろぼろの衣装で登場するというお約束も「どれだけ見る側にわかり易いか」を追求した結果じゃないかと思います。
3時間目<例示列挙の笑い>
例示列挙の笑いとは、同じ状況下(設定)において、違う登場人物を出す(例示する)ことを繰り返すことで「笑い」を増幅させていく笑いのことです。

具体的には「医者と患者」のコントで患者のいかりやさんはそのままなのですが、「すぐ夫婦喧嘩をはじめる医者」や「耳の遠いおじいちゃん医者」、「酔っ払いの医者」、「気の弱い医者」などを立て続けに出し→いかりやさんの「だめだこりゃ」につなげるんですね。。
このスタイルの笑いといえば「欽どこ」などの「良い子・悪い子・普通の子」なども有るのですが、こちらは一演技者に一つの「キャラクター」が限定されていたのに対して、ドリフにおいては個人のキャラクターはあっても、役的なキャラは薄いといえます。

同じボケを繰り返すことを「てんどん」と言いますがこれはどんな振りに対しても「同じ返し」をするのでやはり「笑いの構造的には」似ているのですが「質的」に違いが出てきます。
「てんどん」は何を振っても「同じ答え」が用意されていることが笑いにつながるのに対して「例示列挙」は「同じ振り」を用意しているのだけれども、答えが違うところが笑いになるんですね。

これに対して、同じキャラクターを違うシチュエーションで使う笑いのことを、<限定列挙の笑い>と個人的には呼んでいます。この限定列挙の笑いを得意にしていたのが他ならない「おれたちひょうきん族」ですね。
そして、今の笑いは主にこの「限定列挙の笑い」・・・キャラクター先行の笑いですね。これは、ダウンタウン・ウンナン・トンネルズ世代、めちゃいけ世代、そして今現在も多く使われています。
素人の濃いキャラクターを多用するバラエティー番組も同じです。
これは濃いキャラクターは覚えてもらいやすい上に、作り出しやすいといえます。それと、例示列挙はいっぺんに見せないといけませんが、限定列挙は次の放送日そのまた次の回と繰り返すことによって笑いを増幅させていけます。
また、例示列挙の笑いは最初から最後まで通して見ることで最大限の笑いが発生しますから、簡単にチャンネルを変える今の番組事情からはやりたくてもやりにくいといえるのかもしれませんね。

その上で、めちゃいけ初期の「マツキヨCMパロディ」などにこの<例示列挙の笑い>が見受けられます。
4時間目 ポジション論
ドリフといえば、ちょうさんこといかりや長助さんの存在抜きでは語れません(キッパリ)年齢的な面でももちろんそうなのですが、番組構成上誰かが「つっこみ」役というか「仕切り屋」がいないと成立しない点は今の番組でも変わりません。
誰かが、俯瞰的に番組を見て、ゲストであるアイドルなどを上手に料理していく必要があるんですね。ほかのメンバーは全く番組の進行など気にしなくていいんです。
これは、後に独立して番組を持つことになる志村さんにも影響を与えていると思われます。
具体的に言いますと
自分も参加しながら「最大限相手の自由にやらせる」所にポイントがあるんですね。何人かに自由にやらせた上でダメ出しを行うんです。
ダメ出しというと、けなされているようであまりいい印象をもたないかもしれませんが、こと「お笑い」に関して言いますと、いじるということは同じことを何度か繰り返す必要が生まれるために
見る側に「どこが面白いのか」わかりやすくする効果があるのです。

独立した志村さんはそれまでの「ドリフ」的なキャラ作りから離れて、同じキャラクターを繰り返し登場させる「限定列挙な笑い」に移行しましたが、仕切り方や番組を見るターゲットを子供目線に絞っているあたりはドリフの影響を色濃く残しているのです。
つづいて、
「TBP」とは、「高木・ブー的・ポジション」の略です。
ドリフについてレポートを書こうと思って最初の発見がこれなんですね。次が「例示列挙」だから、この「TBP」の発見がなければ僕は畏れ多くて「ドリフ」について書こうとは思わなかったでしょう。
例示列挙の笑いは、今はあまり用いられていないと書きましたが、それに対して「TBP」はひょとすると「ドリフ」全体の中で最も現在のお笑いシーンに影響を与えているかもしれません。
「TBP」とは??
端的に言って、「箸休め的」ポジションです。
お笑い番組において、あえて「面白くないポジション」をつくり番組の中においてメリハリをつけるのです。
「TBP」は一番組中において一人いれば良いわけで
本当に面白くない人を使うのではなく「TBP」向きの人というのがいます。
「天然」「愛嬌(かわいさ)」が必要なのです。

欽どこ!とかではこのポジションに当てはまる人というのは考えにくいですし、多くの人が入れ替わり登場する「おれたちひょうきん族」にもやはり固定的なこのポジションは見出せないのです。

しかし、現在のバラエティー番組をみまわすと、
ダウンタウンファミリーにおける「山崎邦正さん」
ワンナイにおける「平畠さん」
はねるのトビラにおける「ドランクドラゴン・鈴木さん」
などがいて、逆にどの番組に出てもこの「TBP」をもちキャラにしているのが
出川哲郎さんとふかわりょうさんではないでしょうか。

一般的に「つまらない」と言われがちなのですが
ちゃんとTV番組に出続けているのは、そのポジションがとても「おいしいこと」が認識されてきたからなのです。

志村さんにしろ、加藤さんにしろ、ほかの番組に出演したときに一番話題に出すのが他でもない「高木ブーさん」にほかなりません。

今、一番注目の「TBP」はワンナイの「平畠さん」でしょう。レギュラーにもかかわらず、本当に画面上の露出が少ないのです。3ヶ月レギュラーをやっていて、さんまさんとの絡みもあったのに編集でカットされているんですね。
ですから、見る側はほとんど「ウォーリーを探せ!」的に彼を探すことになりただ単なる番組の楽しみかた以外の楽しみ方も提供してくれています。

また、ダウンタウンの松本さんは自分の著書の中で山崎さんについて
「お笑いの力は有るんだけど、面白くなろうと努力しているけどそうはなっていないところが面白い」と言い、
雨上がりの宮迫さんは山崎さんを
「あの人を見てこれ位だったら自分でもできるかもとお笑いを目指したら絶対痛い目を見る」と言っています。ちょっと、この辺については作る側と見る側では捕らえ方にも差があるかもしれませんね。
面白いものをより分かりやすくするために発生した「TBP」。
これはそういうポジションなのだと理解するとよりバラエティー番組が楽しく見れるのでお試しください
5時間目 復習
ドリフターズの笑いとは
意図的にハプニングを引き起こす方法で笑いを生み出し
同じ状況を一回の放送の中に繰り返し起こさせ、
覚えやすいフレーズにまねしたくなるような振りをつけ
効果音をうまく使い(笑い声の後入れなど)
各個人のポジショニングが今の笑いの礎となっている。
おまけに演出を大げさな方向に向かわせることで
子供が見てもわかり易い「笑い」を
つくっていたといえます。


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